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超弩級の金塊ウォークマンNW-WM1Zレビュー これがソニー最高音質だとは思わないけれど

2019/02/24

こんにちは。実は音モノも大好きな私(@nigoroba)です。

IFA 2016で発表され、全身無酸素銅の筐体に高品位パーツ、何よりもお値段30万円という贅沢の極み仕様で世間を騒がせた金のウォークマンことNW-WM1Z。

常識的な世間の皆様の反応は言うまでもなく「誰が買うんだ」などと冷たいものも散見されましたが、ポータブルオーディオ界隈というものはここ数年異様な盛り上がりを見せており、海外製のお値段6桁DAPが普通に売れ行く時代。

既に感覚は狂わされ、その上ソニーDAPファンな私はもちろん(?)お買い上げ。本当にありがとうございます。

昨年購入し、それから毎日使っていますが、高音質と使い勝手を高い次元で両立した製品と感じています。アンバランス出力・バランス出力の両方で再生時間が各200時間を越えるまで音質の言及は控えておこうと温存していたところ一年が経ってしまいました…

興味のない方から見れば狂気としか思えないとは思いますが、この良さを伝えるべくレビューしたいと思います。

「ウォークマン」の制約にとらわれず開発されたNW-WM1シリーズ

SONYのウォークマンシリーズは、以前から高級ラインとしてNW-ZXシリーズを投入していましたが、それらはあくまでも従来の「ウォークマン」の延長線上として、ポータビリティ等にもある程度重きを置いて開発されていました。

そんな中、IFA 2016でお披露目された「NW-WM1A」「NW-WM1Z」の二機種は、海外勢のハイエンドDAPに真っ向から対抗するかのような本気の二機種で、中でもボディ素材に純度99.96%以上の無酸素銅を採用し、内部配線はかの有名なキンバーケーブルでお値段30万円という「NW-WM1Z」は注目を浴びました。

先行展示が始まった当時、事前に得ていた情報では「NW-WM1A」が従来のウォークマンの正統進化と言えるストレートな味付け、「NW-WM1Z」はアコースティックな表現を重視しマイルドでウォームな、悪く言うならばヌルい味付けとのことで、「NW-ZX1」のストレートな音質が好みで愛用していた私としては、「NW-WM1A」の方が好みではないかと踏んで試聴に行ったわけなのですが…何故か買っていたものは500gの金塊でした。ありがとうございます。

NW-WM1Zの外観

ウォークマンNW-WM1Z

NW-WM1Zの外観上の特徴でまず目を引くのはなんといっても全面金色のボディ。

筐体の素材として使われている無酸素銅が錆びると接触抵抗が上がってしまう上に、みすぼらしい見た目となってしまうため、その防止策として金メッキが施されています。

金色といっても嫌らしい印象は受けず、上品で落ち着いたゴールドという印象です。

「NW-WM1Z」のバランス出力端子

こちらはNW-WM1シリーズの目玉である4.4mm5極バランス出力端子です。見事に傷を入れてしまいました…

「NW-WM1Z」側面の物理ボタン

側面には画面に触れずに基本的な操作が可能な物理ボタンを装備。ZXシリーズやAシリーズ同様に触れた感覚でボタンが識別できるよう、再生・停止ボタンと音量+ボタンには突起が用意されています。細かな気遣いがありがたいですね。

「NW-WM1Z」の背面

背面には「NW-ZX1」から続くシボ加工のレザー素材。焦げ茶色のレザーに光る金色のウォークマンロゴが高級感を演出します。

同時購入したアクセサリ

広い世の中、お値段30万円のNW-WM1Zですらも裸で持ち歩いてしまう猛者の方もいらっしゃいますが、私はそんな度胸を持ち合わせてはいませんので、ケースと保護フィルムを同時購入しました。

ケースは武蔵野レーベルさんの「NW-WM1シリーズ用プレミアムカーフレザーケース CP-NWWM1LCP/B」、画面保護フィルムは同じく武蔵野レーベルさん「NW-WM1シリーズ用 液晶保護ガラス CP-NWWM1GF」をチョイス。

「NW-WM1シリーズ用プレミアムカーフレザーケース CP-NWWM1LCP/B」を装着した「NW-WM1Z」

購入時以来ずっと同じものを使用しているため、他のシリーズや他社製品との比較はできませんが、希少なカーフレザーを贅沢に使用したプレミアムカーフレザーケースは非常に質感が高く、サイズもぴったりで非常に満足です。

数あるNW-WM1Z/NW-WM1A用ケースの中でもおそらく保護されない面積が最も小さく、良い製品だと思います。

「NW-WM1Z」の底面

「NW-WM1シリーズ用プレミアムカーフレザーケース CP-NWWM1LCP/B」には、MicroSDカードスロットの蓋を保護するシールも付属しています。これで完全防御です。

もっさりUIと話題の新インターフェイスの使用感

従来、ZXシリーズのハイエンドモデルではAndroid OSを採用していたウォークマンシリーズですが、NW-WM1シリーズからは全てのモデルが独自OSとなりました。

発売当初のファームウェアはあまりに動作が遅く酷評されていましたが、後にアップデートで改善されました。

私が購入した時点で搭載されていたファームウェアバージョンは1.10。Android OS時代の「W.ミュージック」に比べると機能性・操作性共に完全に下ですが、私としては許容範囲かなと思います。

…が、「NW-WM1Z」の後に「NW-ZX1」を触るとあまりの動作の快適さに驚くというのが正直なところ。

ファームウェアアップデートVer.3.00でUSB-DACやBluetoothレシーバー機能も追加

「NW-WM1A」「NW-WM1A」二機の発売から早二年。

2018年秋に実施されたファームウェアアップデートVer.3.00で、なんと後発の廉価機「NW-ZX300」で実装されていたUSB-DAC機能や、持ち運びもできる(?)半据え置きプレイヤーである「DMP-Z1」に実装された「Bluetoothレシーバー機能」「バイナルプロセッサー」などの機能が追加されました。

私はまだアップデートを適用していませんので、実施し次第追って報告します。発売から二年経過してもなおアップデートを怠らないというのは、大企業ソニーの看板を背負うハイエンドとしての気合いの入りを感じますね。

特に「NW-ZX300」の発売時、「USB-DAC機能」はNW-WM1シリーズではハードウェア的に実現不可能だという噂も流れていましたので、実装されたのは嬉しい限りです。

「NW-WM1Z」の音質や如何に

バランス・アンバランスそれぞれに200時間のエージングが必要

「NW-WM1Z」は搭載パーツが本来の性能を発揮するために、バランス回路・アンバランス回路それぞれで200時間のエージングが必要とされています。

前モデルの「NW-ZX2」において推奨のエージング時間は100時間とされていましたから、約2倍の時間が必要ということで、一体どんな音を奏でてくれるのだろうかと期待が膨らみます。

ZXシリーズから大きく飛躍した音質、まずはアンバランスから

「NW-WM1Z」と「MDR-EX800ST」

「NW-WM1Z」、「NW-WM1A」の一番のウリはバランス接続ですが、購入当初はバランス接続用のケーブルを持ち合わせていなかったこともあり、アンバランス接続から聴き始めました。なお使用しているイヤホンは主にMDR-EX800ST、Just ear XJE-MH2+標準ケーブルです。

箱出し直後では分離感に欠け、籠もったような印象を受けますがそれでもなお、ZXシリーズとはまるで格の違う力強さ、余裕のある鳴らし方を感じます。

「NW-ZX1」の時には試聴機とのあまりの音の違いに驚いたなぁなどと思い出に浸ったり。

エージングについて賛否両論はありますが、少なくともソニーのハイエンドDAPにおいてはあからさまに音が変化しますので、発売直後に最高音質!などと捲し立てていたところの信憑性は如何な物かと思います…。「NW-ZX1」の時にも、当初明らかに同世代の普及機であるF880の方がマシな音を出していました。

流石に「NW-WM1Z」は格が違いますから、相当使い込んだ「NW-ZX1」と比べても圧倒的な質の高さを感じましたが、尋常では無いほどの気合が込められた素晴らしい製品を適当なレビューで流さないでいただきたいというのが正直なところ。

200時間経過 本気のアンバランス出力を見た

さて気を取り直して200時間を経過したアンバランス出力の感想です。

一言で言うならば、『「NW-ZX2」がこう鳴って欲しかった』。ウォークマンファンの方以外には全く意味不明な表現で申し訳ございません。

実は私、「NW-ZX1」は大変気に入ってヘビーに使いましたが、「NW-ZX2」は試聴段階で自分の求めているものとは違うと感じ、あまり興味がありませんでした。

試聴だけでオーディオ機器の音質を語るのはあまり好かないのですが少しだけ話させてもらうと、比較的ソースに忠実に、ストレートに表現する「NW-ZX1」に対し、「NW-ZX2」はなんでも小綺麗に聴かせてしまう、という印象を持っています。

44.1kHz系統専用クロックの追加や電源周りの更なる強化など、オーディオ的には至極真っ当なアプローチの「NW-ZX2」でしたが、基本的にはありのままを聴かせて欲しい私の好みには合わなかったというわけです。

それを踏まえての「NW-WM1Z」のアンバランス出力ですが、「NW-ZX2」の持つ綺麗さ・可憐さと「NW-ZX1」の持つ力強さ・ストレートさが見事に融合し、それを従来のS-Masterウォークマンとは次元の違う余裕の鳴らし方で表現。思わず、『「NW-ZX2」でやりたかったのはこれか』と一人勝手に納得。

ただ、巷で言われている通り、アンバランスだと少しゆったりとした味になるというのはやはり多少あります。がしかし、音源によってはちゃんと暴れてくれる一面も見せ、非常に高品質に仕上がっていると思います。バランス接続推しだからと言ってアンバランス接続側がおろそかになっているということは決してなく、ハイエンドらしいアンバランス出力を見せてくれました。

とはいえ、ノリの良さ・真っ直ぐさでは黒またはノーマルこと「NW-WM1A」に譲るのは間違いないです。

実は今回のWM1シリーズ2機、バランス側の回路は「NW-WM1A」「NW-WM1Z」の2機で搭載パーツの差異が少なくなっています。バランス推しのWM1シリーズですが、「NW-WM1Z」の味をより濃く楽しめるのは実はアンバランスの方かもしれません。

続いて本命バランス接続

「NW-WM1Z」のバランス出力

アンバランス側回路の200時間エージングが無事完了したところで、本命のバランス接続を試します。

アンバランス出力でさえも新世代ハイエンドの圧倒的実力を見せつけられましたが、WM1シリーズの推しは間違いなくバランス出力。「NW-WM1Z」を購入される方なら、こちらを常用するという方がほとんどではないでしょうか。

こちらで使用しているのはJustear「XJE-MH2」に、ケーブルはキンバーケーブル採用のMMCX規格ケーブルであるSONY「MUC-M12SB1」を使用しています。

「NW-WM1Z」と「XJE-MH2」

アンバランス接続時とは違うケーブルを使用しているため、そこでも差が付いているとは思いますが、一聴して明らかに力強さ、安定感がアンバランス接続とは段違い。

こちらもアンバランス接続時と同じく、最初は解像感・分離感に欠けるという印象もありましたが、これまでのウォークマンとは明らかに格が違う鳴りっぷりに胸が高鳴ります。

日々目まぐるしく変わるバランス接続の音質に驚き

アンバランス接続でも200時間経過した後の音には感動しましたが、バランス接続のエージングによる変化はアンバランスのそれとは次元が違う変化っぷりで驚きました。

毎日使う度に変化するスケール感・生々しさのあまりに感動で泣かされることもしばしば。

これはアンバランス接続にも通ずる話ですが、これまで使っていた「NW-ZX1」に比べいちいち情報量が多い。

「聞こえる音の数が多い」という意味の情報量ももちろん増えていますが、それよりも音の一つ一つをより表情豊かに、立体的に表現するようになったことによる感動が大きいです。

例えばピアノの音ひとつをとっても、「ピアノの音」留まりではなく「ハンマーが弦を叩いた音が響いている」までをひしひしと感じさせる表現力を持っています。

また新S-Master HXの特徴として語らねばならないのは、これまでずっとS-Master搭載機の弱点とされてきたホワイトノイズの大幅低減。

一部ではデジタルアンプである以上避けては通れないとも言われ、新S-Master HXにおいても完全には無くなっていませんが、従来のS-Master機とは比べものにならない程少なくなっています。

これにより、従来のウォークマンの苦手としていた、無音の状態から音が「ぽ」と現れる、というような表現の説得力が格段に増していると感じます。

新S-Master HXは素晴らしいけれど、伝説の積分型DACの復活を熱望します

ここまで「NW-WM1Z」を絶賛してきましたが、ここで少し違うお話を。

ご存じでしょうか、遙か昔に「NW-WM1Z」と同じソニーが製造していた「積分型DAC」を。ソニー製CDプレイヤー初号機である「CDP-101」に始まり、当時ならではの莫大なコストを投入し一時代を築きました。

その後時は流れ、現在では市場に流通するD/AコンバータのほとんどはΔΣ変換による1bit方式となりました。

昔ソニーが製造していた積分型DACは、今のDACに比べて数値上のスペックは完全に劣るものの、現代のどのハイエンドDACも持っていない高い表現力を持っています。

私が実際にその音を聴いたのは最近の話なのですが、「CDP-101」や「CDP-701ES」を実際に入手し、それらが奏でるあまりに生々しい音に驚かされました。

まるで音が収録現場から飛び出てくるかのような、音源に込められた「魂」が再生されているような、現代の機器では絶対に感じることのできない体験です。

また、ポータブルCDプレイヤーの「ディスクマン」の中に積分型DAC搭載機が存在し、それもまたビックリするほどいい音ですので、あれを知ってしまうとポータブル機への採用も是非お願いしたくなってしまいます。

かつて同じソニーが製造していた積分型DAC搭載機。これがタイトルの「これがソニー最高音質だとは思わないけれど」の意味です。

「ウォークマン」という製品の方向性としての消費電力の問題や、このハイレゾ時代にはそぐわないなど、諸々問題もあると思いますが、音楽プレイヤーをパーツ単位で全て自社設計できるメーカーがソニーしか居ない今、是非とも積分型DACを復活させてほしいです。

NW-WM1Zには大満足です

前述の積分型DACの音は本当に素晴らしく、音楽好きの方には一度は聴いていただきたい、願わくば現代に製品として復活してほしいものなのですが、「NW-WM1Z」に搭載された新しい「S-Master HX」も、かなり高品質な音を奏でつつ、フルデジタルアンプならではのバッテリー持ちの良さを発揮し、ポータブルプレイヤーとして実に完成度の高い製品となっていると思います。

そもそも、誰もが知る大企業で今ではあまり昔のような無茶はしなくなった(できなくなった?)ソニーというメーカーが、これだけ尖った製品を世に送り出してくれたことが心から嬉しいです。

また、私自身も一消費者として、リアルタイムでこの製品を手にできたことを誇りに思います。

本来の「ウォークマン」のコンセプトである移動のお供には勿体ない程の高音質。「NW-WM1Z」は私の人生を間違いなくより豊かな物にしてくれました。

私は30万円を軽く払える身分にはほど遠く、「Justear XJE-MH2」共々、本当に清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入しましたが、1年以上経った今でも購入して良かったと思っています。

ポータブルプレイヤーに30万円という大枚をはたくというのは、この世界に興味が無い方にとっては理解に苦しむものがあるとは思いますが、音楽やオーディオが好きな方には是非一度聴いていただきたい一品です。

決して安くは無いどころではない買い物ですが、日々の生活をより鮮やかにしてくれること請け合いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。それでは!

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